2020/07/19 11:07

「天気の子」がアマゾンビデオでリリースされまして

有料でしたけど観ました

たいがいは少し待てば旧作になって無料配信となるんですが

こと新海誠さんの作品に限っては旧作になっても有料であることが多いのです

といってもたかだか数百円の話ですので

映画館に行ってること思えば安いものですし

何より自宅で好きな時に観れるし 中断しても続きから観れるし

まあコロナの影響もあって 映画館行くことも少なくなるかな

絶対映画館で観たいと思うような話題作も近頃ないしね

エンタメの世界も変革されつつあるんですね...


社会現象を巻き起こした前作の「君の名は。」もかなり良かったのですが

今回の作品もすんご~っく 良かったです

たいがい二番煎じってのはコケることが多いけど

管理人的には前作を超えてしまったと思います

人によっては前作の方が良かったという人もいますが

まあ その辺は観る人の感性や好みの違いなので・・・

この作品 全編に渡ってほぼ雨なんです

新海作品は自然現象をアイテムにしてるのが多いんですよね

「君の名は。」は彗星だったし

「言の葉の庭」も新緑を濡らす雨だったし

「秒速5センチメートル」なんか 何のことかと思ったら

桜の花びらが舞い落ちるスピードらしいです

大いなる自然の風情とちっぽけな人の心情の対比を描くのが実に上手いですね


折しも日本列島に梅雨前線が停滞し

各地に大雨の被害をもたらしているって時に

呑気に自宅でビデオ鑑賞なんて ちょっと申し訳ない気もしたのですが

まさに「天気の子」を地で行くように 本当にずっとずっと雨ばっかりでした

この物語では3年間雨が降り続き 東京の下町は水没してしまいます

まるで世界が狂ったように思われましたが

住み家を追われた年配女性がポツリと言うんです

200年前はこのあたりは海だったそうよ…って

なるほど 地球が誕生していったい何年経ったと思っとるんや

ましてや 人間さまが山を削ったりゴミで海を埋めておいて

それは世界が狂ってるんやないわな

狂ってるのは人間さまの方なんですわ

って そんなメッセージな作品でした


物理的に考えてみれば

そもそも地球に存在する水分量は常に一定なので

地球温暖化で北極の氷が融けて海の水位が上がったり

海水の温度が上がれば水蒸気が増えて雨雲が発達するのも当然の話です

今回の九州の豪雨も東シナ海の海水がほんの1℃上がっただけであの様相です

何も水分量だけではないです 地球上ではすべてのものが一定です

増えもせんし減りもせんのですわ

これ実は般若心経の一節にも説かれています

ただ形を変えてるだけなんです

埋立地にしたって山の土が海に移動させられただけの話です

別の見方をすると 縦の領域を横の領域に変換させているんです

人間さまにとって生活し易いのは縦の高さより横の広がりですものね

地球の長い歴史の中で自然が少しずつ形を変えて来たものを

人間さまがやり易いようにチャチャっとそれをいじくってるんです

物語の終盤でこんなセリフがあったんです

「世界なんて元々狂ってるんだよ」

この世界というのは紛れもなく人間界のことなんですよね

ただ ここで仏教的にツッコミを入れさせてもらうと

人間は元々狂っているんではなくて

狂ってるから人間として生まれて来たんです

なので覚者ブッダは生まれ変わることはありません


この「天気の子」もファンタジーには違いないんですけどね

前作の「君の名は。」ほどがっつりファンタジーでもないんです

現実社会のシビアな部分がけっこう強調されてるんです

お金で欲求を満たし  力でもって自己を主張する

そして  その対価としての結果

人間界では当たり前の営みですが

その結果が果たして幸なのか  あるいは苦なのか

これも人それぞれの心の持ち方次第でしょうけど

どちらにしてもこれらもまた

世の中全体では増えもしないし減りもしないんです

幸せの数だけ不幸も存在するのです

対極と思われるこれらは 実は対をなす同類だからです

主人公の少年が気付いた「世界の秘密」というのは  この辺のことなんでしょうかね

でも自然のバランスを壊したのが人間だとしてもですね  今さらどうしようもないことです

人が狂ってるのは 生きるのにやり易い方向へと一方通行だからです

海に埋めた土が元の山に還るわけがないのでね

あらゆるものが不可逆的なのも この世界の秘密であって物理的法則でもあるんです

人の心も同じで 一方通行的に自己の幸福を対価として得られる手段を欲するんです

たとえば手っ取り早いのがお金とか権力とか あるいは暴力とかです

自分を利すること=幸福 という図式が本能的に成り立っています

ところがです

幸福と思われたものも次の瞬間不幸に変わる素質を持っているんです

逆もまた然りです 同類なので…

水が水蒸気になって雲になって雨となるように 形を変えているだけの話なんです

少年はこのことに気付いてしまったのでしょう


そして最後・・・ これは観る人それぞれの解釈なんでしょう

レビューなんかを見ても実に様々な意見がありますね

普通に観ればハッピーエンドなんですが

ハッピー過ぎてなんかちょっと違和感があるんです

新海作品は一見単純な流れであっても実はその奥に深いものがあるのでね

観ていない方はわからないでしょうけど

あくまで管理人個人的な想像ですが

少女の肉体はすでにこの世から消滅したと仮定すればしっくりくるんです

あるいはもっと深く考えると少年もそうなのかな...と

俗っぽい言い方をすれば 死んでしまったってことです

きれいな言い方をすれば 昇華したとでも言いますか・・・

ネタバレになっちゃいますが なぜそう思うのかを言います

そのヒントはふたつの言葉です

ひとつは「天気の子」の予告動画の中での

「あの日僕たちは世界の形を変えてしまったんだ」という言葉

もうひとつは ラストのラストで少年が少女にかけた言葉

「僕たちはきっと大丈夫だ」

なぜなら

この狂った世界を変える方法はただひとつしかありません

それは科学の力でも武力でもなく かと言って環境保護の精神でもありません

元々狂っているものなので 同じく狂ってる人間がどうにも出来ないんです

わしゃ狂ってへんで~!と言っても さっき述べたように

あなたもわたしも 狂っているから人間に生まれて来たのです 残念ですが・・・

狂い量?というか狂い度合いもやっぱり全体的には一定なのです

なので人間のやり易い方向へと一方通行で事は進み続けます

元の状態に戻すことは不可能です

それを変える唯一の方法は 自分自身が二度とこの世界に生まれて来ないことです

大丈夫と自信を持って言えるのはこの境地を悟った時のみです

という理由で少女あるいは少年も 実はある時点で天に召されていたとしたら

物語全体としては辻褄が合うんですがね

まあアニメなんで子供も観ますしね 重い終わり方ではチ~ンですわな

でも深く考えずに観てもとっても感動的なラストですよ

おっさんも泣きそうでした (^ω^)


ついつい長々と感想文を書いてしまいましたが

それだけこの作品 良かったんですよね~

ぜひみなさんも観ていただいて何かを感じ取ってください~

狂った世界にいるとしても

わたしたちは素晴らしい想像の世界で楽しく生きましょうよ~

ではでは (*`0`*)/マタネ∼



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